ネットワーク設計者の思考プロセス パート1(Cary Chen)

    本ページは英語ドキュメントを翻訳したものです。

     


     

    ネットワーク設計者の思考プロセス パート 1:Cary Chenネットワーク設計者の目標は、ビジネス ニーズに合った設計を作ることです。この目標を実現するために、ネットワーク設計者は、CCDE 実技試験の内容で概説されているプロセスと同様の思考プロセスを踏みます。このブログでは、ネットワーク設計者のタスクの概要をシンプルに説明していきます。

     

    • 設計要件の分析 – ネットワークによるサポートが必要なビジネス目標、ビジネス要件、条件、制約を分析および理解し、ビジネス要件を技術要件に変換します。また、新しい設計を実装する既存のネットワークを含めて、技術要件、条件および制約を分析し、理解します。結局のところネットワーク設計者が実行する作業の多くは既存のネットワークに関連します。多くのネットワーク プロジェクトでは、ネットワークの拡張、アップグレード、移行、合併、処分を行い、新しいネットワークを最初から設計するのはごくまれなことです。
    • ネットワーク設計の開発 – ネットワーク設計者は、すべての目標、要件、条件、制約に基づいて、目標およびその他の条件を満たす実現可能な設計オプションを用意する必要があり、最終的には、目標を達成するために最適な設計を選択する必要があります。
    • ネットワーク設計の導入 – 設計の導入によって容認できないような業務の中断が生じたとすれば、それは適切な設計とは言えません。つまり設計者は、ネットワークを設計する際に導入計画も考慮する必要があります。
    • ネットワーク設計の検証と最適化 – 設計を実稼働環境に完全に導入する前に、その設計を検証する必要があります。設計は、シミュレーション、ラボ環境、または制御された実稼働環境で検証できます。設計が設計目標を完全に満たしていない場合は、最適化する必要があります。必ずしもネットワーク設計者が自分で検証を行う必要はありませんが、設計者は検証戦略と成功条件を定義する必要があります。

     

    シンプルな設計の例:新しい地域 ISP でPOP を接続する IP バックボーン ネットワークを構築する

    シンプルな例を使って、前述したネットワーク設計者の思考プロセスを具体的に見ていきましょう。これは、完全なネットワーク設計ではなく、ネットワーク設計のほんの一部です。この記事では、「設計要件の分析」および「ネットワーク設計の開発」タスクのみを扱います。ネットワーク設計者に、次の情報と要件が示され、シングル エリアまたはマルチエリアの OSPF エリアを設計するタスクが割り当てられているシナリオについて考えてみます。

     

    情報:

    • このネットワークは、企業に MPLS、VPN、およびインターネット サービスを提供します。
    • OSPF は IGP として選択されています。すべての P ルータ、PE ルータおよびその他のコントロール プレーン ルータ(BGP RR など)が OSPF ドメインに含まれています。
    • このネットワークは、BGP フリー コアで MPLS を実行する設計になっています。つまり、BGP はどの P ルータでも実行されていません。
    • MPLS TE を導入し、固有の帯域幅、遅延、または冗長性要件を持つ特定のアプリケーションに対して選択されたパスにトラフィックをルーティングします。
    • ネットワーク ライフサイクルの 1 年目には OSPF ドメインに約 50 台のルータが存在し、その数は、予測に基づくと数年で 200 台まで増える予定です。

     

    要件:

    • ネットワークは高可用性(99.999 % 以上の可用性)を実現する必要があります。
    • 物理パスで許容される場合は常にトラフィックの遅延を最小化します。
    • リンクまたはノードの障害が発生した場合、OSPF ドメイン内の 2 台の PE ルータ間のトラフィックが 100 ミリ秒未満で収束するようにします。

     

    情報と設計要件の分析:

    明確な設計要件もありますが、明確でないものもあります。私がそのネットワーク設計を担当するなら、まず明示的な要件から始めて、以下のような思考プロセスをたどります。

     

    • 99.999 % のネットワーク可用性 – この可用性を実現するには、ネットワーク トポロジの観点からノードとリンクの冗長性を相当強化する必要があります。そこで物理ネットワーク トポロジの設計を分析し、将来の拡張を見込んで OSPF の観点からネットワークのサイズと規模を予測し、OSPF LSA の数を見積もります。ほとんどのリンクがポイントツーポイントであれば、ノードが増えると、OSPF LSA の数も増え、SPF ツリーは大きくなります。最近の ISP ネットワークは 10 年前に比べ大幅に安定していますが、リンク数が増えると 1 日あたりのリンク障害数が増える可能性があります。障害が増えると、LSA の更新が増えます。リンクとノードの密度を高くするには、LSA と SPF の計算を処理するためにより強力なルータ CPU が必要です。RIB および FIB テーブルが大きくなると、より多くのルータ メモリも必要になります。通常、200 ノードの OSPF ネットワークの場合、OSPF 内部ルートは数千程度です。BGP ルート(インターネット ルート、VPN ルート、またはその両方)の数は、一般的に PE ルータの OSPF をはるかに上回ります。 ここで設計者は、既存のルータに RIB および FIB テーブルを格納できる十分なメモリがあること、および OSPF や他の制御プロトコル(BGP など)を処理する CPU に十分な処理能力があることを確認する必要があります。ISP コア ネットワーク市場をターゲットにしている最新のルータは、一般的に非常に強力でスケーラブルです。一方で設計者には、ベンダー、モデル、メモリのサイズなど既存のルータの情報は提供されていません。ルータがルート集約なしで多数の LSA を含む大きなシングル エリアを実際にサポートできるかどうか確認するために、これらの情報を得る必要があります。または、LSA の数、トポロジ、ルーティング情報を減らすためにマルチエリアを使用する必要があります。適切な質問を行い、必要な情報を得ることもネットワーク設計者の仕事の一部です。たとえば、既存のルータが人気の高い ISP ルーティング プラットフォームである場合、そのルータは大きなシングル エリアをサポートできると確認できます。ルータのメモリ サイズを確認する場合、FIB テーブルはルート プロセッサに加え、ライン カードにもあるので、ルート プロセッサとインライン カード両方のメモリをチェックします。
    • 物理パスで許容される場合は常にトラフィック遅延を最小化する - 冗長パスが存在する場合、ルート集約によってルーティング情報が失われたり、最適でないルーティングが生じる場合があります。ルーティングが最適でない場合、トラフィックが長いパスにルーティングされ、トラフィック遅延が長くなったり、トラフィックの輻輳が発生する原因になります。OSPF のシングル エリアはルーティング情報を集約しません。すべての OSPF ルータには、OSPF ドメイン全体を表す同一の完全なトポロジ表示があります。シングル エリア設計では、トポロジやルーティング情報を失っても最適でないルーティングは生じません。一方、マルチエリア設計では、ルート集約が展開されている場合、最適でないルーティングが生じます。慎重にルート集約を設計することで、この問題に対処できます。
    • リンクまたはノードの障害が発生した場合、OSPF ドメイン内の 2 台の PE ルータ間のトラフィックは 100 ミリ秒未満で収束する – これは、PE ルータ間(OSPF ドメインから見た場合のエンドツーエンド)の収束要件です。ここで頭に浮かんでくるのは次のような疑問です。このようなコンバージェンス時間が必要なアプリケーションはどれか。これは MPLS VPN トラフィックやインターネット トラフィックには必要か。ユニキャスト トラフィックのみの要件か、それともマルチキャスト トラフィックも含まれるのか。実現可能か。完全な高速のコンバージェンス設計は私の OSPF エリア設計には含まれませんが、OSPF エリア設計が高速のコンバージェンスに与える影響を知っておく必要があります。これらの疑問を解決し、要件をより深く理解していきます。OSPF LSA および SPF タイマーを単独で調整しても、このレベルの非常に高速なネットワーク コンバージェンスは実現できません。なんらかの種類のデータ プレーン FRR 機能が必要です。これには MPLS FRR または IP FRR を利用できます。MPLS TE が導入されるため、MPLS FRR が正しい選択に思えます。MPLS FRR が高速コンバージェンス設計に含まれるかどうか確認します。MPLS TE および FRR は、マルチエリアよりもシングル エリアの方がシンプルに機能します。

     

    暗黙要件

    暗黙要件、つまり、OSPF 設計により影響を受ける項目、あるいは自分の設計に影響を与える可能性のある項目が存在します。この点について次に分析します。

    • 特定のパスにトラフィックをルーティングする MPLS TE – シングル エリアの MPLS TE の方が、エリア内 TE よりも制限が少なく、導入が容易です。
    • OSPF ドメインで 200 台まで増加が見込まれるルータ - OSPF のサイズと規模の見積もりから増加が見込まれます。
    • BGP フリー コア – これは、P ルータが BGP プロセスを実行する必要がないため、BGP ルートや転送エントリを保存する必要がないこと意味します。したがって、P ルータには PE ルータと同じ量のメモリは必要ありません。これは私の設計に特に影響を与えません。

     

    このブログでは、設計の課題と私の予備分析を紹介しました。この設計タスクにあなたはどのようにアプローチしますか。次のブログでは、私のアプローチ方法と最終的な設計ソリューションを説明します。

     

    著者について

    ブログ 13 および 14:Cary Chen.png

     

    Cary Chen は CCDE #20130038 およびダブル CCIE #14263(SP および SP オペレーション)であり、シスコ アドバンスド サービスのマネージャです。Cary は、15 年間にわたって ISP のお客様をサポートし、ISP ルーティング プラットフォームを開発してきました。彼は ISP のお客様と協力して次世代ネットワークを設計する仕事を楽しんでいます。

     

     

     

    次の方法で、このテーマについてさらに学んだり情報を交換したりすることができます。

    CLNBanner