CCIE 認定ホルダーへのインタビュー
岡山 義周さん
CCIE 6冠達成の快挙を支えた原動力は、強い意志と
資格取得後の未来の自分に対する明確なイメージ
今年8月に CCIE Wireless を取得し、日本人で2人目 (※1) となる CCIE6 冠を達成した岡山さん。最初の CCNA Routing and Switching 取得から実に12年――6冠取得までの道のりは決して平坦なものではなかったという。未経験かつ遅咲きでのスタートというビハインドをはねかえしたその原動力は何だったのか。モチベーションの保ち方や試験に臨む際の心構えなど、岡山さんの話は CCIE 取得を目指す人たちへの金言に満ちていた。
CCIE としての使命感が6冠達成を後押し
―― | まずはこのたびの CCIE Wireless の取得および CCIE6 冠の達成おめでとうございます。合格した瞬間の感想はいかがでしたか? |
岡山さん | 合否通知のメールが届いて画面に “Pass ” の文字があるのを見た時、真っ先に感じたのは長かった試験勉強とプレッシャーからの解放感でした。仕事上の必要性もあって CCIE Wireless の取得を決意したのが今年の2月。そこから合格までの半年間に3回受験しました。会場はすべてシドニーです (※2)。渡航費や現地での宿泊費など受験に関する費用はすべて個人で負担しました。 |
―― | 名刺にも CCIE 取得を示すアイコンがずらりと並んでいますね。 |
岡山さん | 初対面の相手と名刺交換をした時は会話のきっかけになりますし、何よりお客様はこのアイコンを見て私に大きな信頼を寄せてくださいます。その思いに応えるためにも、「シスコのことなら岡山」 と言われるような真のプロフェッショナルになりたい。CCIE として、エンジニアとしての使命感が6冠達成を後押ししてくれたのだと思っています。 |
留学生時代にシスコと “ニアミス ”
―― | シスコとの出合いについて聞かせてください。 |
岡山さん | 高校卒業後に渡米し、現地の語学学校に1年間通った後、カリフォルニア州モントレーの大学に進学しました。ある日、豪邸が立ち並ぶエリアを通った時に友人から 「あれはみんなシスコの社員の家だ」 と教えてもらい、とても驚いたのを覚えています。その時初めてシスコの名前を聞いたくらいなので、同じ州のサンノゼに本社があることも、シスコが何をやっている会社なのかも知りませんでした (笑)。 |
―― | どのようなきっかけでこの業界に入ったのですか? |
岡山さん | 大学を卒業して23歳で帰国し、1年ほど自由を謳歌した後、24歳で大手電機機器メーカ会社のコンシューマユーザ向け PC コールセンターで働き始めました。この時は IT の知識はまったくというほどありませんでしたが、毎日の業務のためにその会社が主催している管理者・開発者向けの IT 資格プログラムを受講したのです。2002年10月には他ベンダー資格を7個取得し、中間レベル認定の取得を達成することができました。その後2002年11月に CCNA Routing and Switching を取得したことがきっかけで IT インフラ業界に就職し、翌年の11月に CCNP Routing and Switching を取得しました。 |
5度目の挑戦で CCIE Routing and Switching を取得
―― | 初めて取得した CCIE Routing and Switching についてお聞かせください。 |
岡山さん | 最初に取得したのは CCIE Routing and Switching です。その当時はサーバエンジニアとして働いていたのですが、畑違いのエンジニアの間でも 「CCIE Routing and Switching は IT 業界でもっとも“強い ” 資格」 と言われていました。「強い」 というのは取得する価値があるという意味です。そこで 「この業界に身を置くなら、CCIE Routing and Switching を取得するか、辞めるかしかない」 と自分を奮い立たせて受験を決意しました。しかし実際に取得できたのは14ヵ月後の2005年6月。5回目の試験で合格しました。 |
―― | 現在の岡山さんからは想像もつきませんが、合格までの長い期間、勉強は辛くありませんでしたか? |
岡山さん | CCIE Routing and Switching の取得を同僚や取引先などの周囲に宣言していたため、「言い出した以上はあきらめてたまるか」 という初志貫徹の気持ちがモチベーションを維持してくれたのだと思います。また受験を重ねるごとに、一歩一歩合格に近づいているという手応えも感じていましたので、「ここであきらめてしまったら、今までの投資が無駄になる」 という現実的な思いもありました。 |
―― | 働きながらの受験勉強は大変だったと思いますが、学習時間はどのようにして確保したのですか? |
岡山さん | 平日は移動時間や睡眠時間を学習時間に充て、毎日3時間は勉強しました。どんなに遅く帰宅しても、どんなに疲れていても最低限1つのコマンドを必ず習得すると決めてやり抜いたのです。週末はもちろん年末年始や大型連休は格好の勉強のチャンスですから、1日中自宅用に購入した機材やテキストと向き合っていました。その甲斐あって合格した時は、喜びより先に 「これでもう試験勉強をしなくていいんだ!」 という解放感に浸りました。 |
取得を重ねるごとに自分の知識&技術の底上げを実感
―― | 2番目に CCIE Voice を受験した理由は何ですか? |
岡山さん | 当時は IP 電話の黎明期で、これからの発展が見込まれていたことが取得を決意した一番の理由です。IT インフラではなく ” 電話 ” という自分にとってまったく未知の分野を一から学んだため、これまで取得した6つの CCIE を振り返っても、CCIE Voice がもっとも難しく感じました。サンノゼとブリュッセルで1回ずつ、シドニーでは2回受験し、4回目となるシドニーでの2回目の受験で合格することができました。勉強方法は CCIE Routing and Switching と同じで、ひたすら実機を操作し、テキストを反復して試験に備えました。 |
―― | その後の CCIE 取得についてお聞かせください。 |
岡山さん | 2007年7月に取得した CCIE Security と2008年5月の CCIE Storage Networking では、サーバエンジニアとしての経験が取得に大きく役立ちました。3つ目となった CCIE Security のころから 「CCIE を突き詰めて極めてやろう」 という気持ちが大きくなってきました。2007年11月の CCIE Service Provider からは、これまで辛く感じていた受験勉強がそれほど苦にならなくなり、自分の知識や技術のベースアップを実感することができました。 |
―― | 5つ目の CCIE Storage Networking から次の CCIE Wireless 取得までは期間が空いていますね。 |
岡山さん | 実はそのころ、自分の将来について悩んでいたことがあり、しばらく資格取得からも距離を置いていたのです。そんな時励みになったのが、シスコ技術者認定を通じて知り合った仲間の存在です。他の方が頑張っていたり、周囲が期待してくれたりしている中で自分が何もしていない事に疑問を感じていた時、以前にある人がかけてくれた、「努力している時のあなたは輝いている」 という言葉を思い出し、再びモチベーションが高まっていきました。CCIE Wireless を取得した時は、いつもの解放感とともに 「この世界に戻ってきちゃったな」 という思いも感じましたね (笑)。 |
CCIE は IT インフラ技術全般の不変的な知識を習得できる資格
―― | CCIE の取得に挑戦している人へのアドバイスをいただけますか? |
―― | 最後に今後の岡山さんの目標についてお聞かせください。やはり7冠達成を目指すのでしょうか? |
岡山さん | はい、来月20日に CCIE Data Center を受験します。新たな CCIE 取得への挑戦は、新たなプレッシャーとなって自分に跳ね返ってきますが、ここまで (6冠) がんばってきたのだから、CCIE を極めて“シスコエンジニアの見本 ” のような存在になりたいと思っています。日進月歩で新しい技術が生まれるこの業界において、CCIE は取得に向けて努力したことがこれから先もずっと残る、シスコのみに限らない IT インフラ技術の不変的な知識を習得することができる資格です。これからもプレッシャーを力に変え、一人のエンジニアとして周囲の期待に応えていけるよう成長し続けていきたいです。 |
※1:1人目はシスコジャパン 為久徳敬。
※2:CCIE Wireless、CCIE Service Provider、CCIE Service Provider Operations のラボ試験は海外で行われる (2014年10月現在)。
Comments